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腐バイオ(寄贈小説)Plot of Valentine

≫EDIT

枢木葎様より寄贈いただいた小説です!
洋館事件以前のバーキン一家とウェスカーのバレンタイン話です。ほっこりして下さいw(*^。^*)
ここではウェスカーとシェリーは面識があり、しかもかなり仲良しであった、という設定になっています。

※本郷の作品ではありません!転載・引用は絶対しないで下さい!
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(2014年サイト移行により再掲載)



Plot of Valentine
作者:枢木葎


2月13日。

「今年は日本式で挑戦してみようか、シェリー?」
パパはにやりと笑いながら私にそっと耳打ちした。蚊の泣くような小さな声だったから、キッチンでミネストローネを温めていたママには勿論聞こえない。確信犯だ。ママやアルおじさんを驚かせようとしているに違いない。
「日本式になにをするの?」
分かってはいるけれど、念のために訊いてみる。
「そりゃ勿論、ヴァレンタインさ」
さも当然と言わんばかりにパパは言う。その顔はちょっと自慢そうだった。パパのことは勿論嫌いじゃないけれど、ママの言うように“可愛く”は見えない。きっと、ママは今でもパパに恋しているんだろう。だから、いつまで経っても“可愛く”見えるのだ。
「日本式のヴァレンタインって、どんなの?」
尋ねると、パパはうふふ、と笑った。
「チョコレートを作ってプレゼントするのさ。パパとシェリーでね」
無理だ。
即座にそう思った。ママがいるならまだしも、スクランブルエッグも満足に作れないパパと、ようやくクッキーを作れるようになった私では無理だ。
“無謀”というの言葉に近いのかも知れない。
「やめたほうがいいよ、パパ」
そう言うとパパは不思議そうな顔をした。きょとんとした目で私をじっと見詰めている。それがなんだか私よりも小さい子みたいで、なんとなく可笑しかった。
「だってね、チョコレートを作るにはミルクチョコやスイートチョコを刻んで溶かしたり、生クリームやお酒を入れたり、冷やしたり、大変なんだよ」
一生懸命説明しても、パパはなかなか分かってくれない。「電子レンジで溶かして型に入れて、冷蔵庫にいれりゃいいじゃん」と言ってほっぺたを膨らませる。まったく、パパはお菓子作りの大変さを分かっていない。
「微妙な調節が大変なの!」
そう言ったら、「パパの研究のほうが大変だよっ!」と言い返された。本当に子どもみたい。
もう一度言い返そうとしたら、ママが大きなお皿を持ってダイニングへ入ってきた。
「さあ、夕飯にしましょう」
きっと、昨夜から準備していたローストチキンが上手くいったのだろう。嬉しそうににこにこと笑うママを見たら、私もパパは何も言えなくなってしまった。
なんとなく、胸の辺りがちくちくして落ち着かない。ママをひとりぼっちにしてるみたいだと思うと、少しだけ泣きそうになった。
ママに秘密をつくるのは嫌だけど、ママに喜んで欲しい(勿論アルおじさんにも)。
どうしよう、と小さな声で呟いた。


「それは大変だったな、アネット」
ウェスカーは微苦笑を浮かべながらカップに口を付けた。香ばしいコーヒーの匂いが鼻腔を刺激する。仄かな酸味と苦味が、舌に心地良かった。
このカフェのブレンドが、最近のお気に入りだ。
「本当に。気がつかない振りをするのって、案外大変なのね」
自分からのささやかなプレゼントであるホット・ショコラを飲みながら笑う彼女は、いつも以上に輝いて見えた。余程家族からのプレゼントが嬉しかったのだろう。少し興味が湧いた。
「それで?何を貰ったんだ?」
尋ねると、彼女はくすりと笑った。
「大きな大きな、ホットケーキよ。チョコレートシロップでデコレーションされたね」
「なるほど」
実に彼ららしいと思いながら、さて、そんな彼らに手製のチョコレートタルトを渡しても良いものかとうっそりと思った。

(終)

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